税理士事務所LPの作り方② | ターゲット顧客の本当の悩みを深く掘り起こす、ペルソナ分析手法
税理士事務所がWebからの問い合わせを獲得しようとする際、陥りがちな失敗が「万人に向けた無難なメッセージ」を発信してしまうことです。
- 税務のことなら何でもお任せください
- 迅速・丁寧・親身に対応します
といったアピールは、一見すると親しみやすく感じられます。
しかし、ネット上で具体的な課題を抱えて税理士を探している訪問者の心には、ほとんど響きません。
成果を出すランディングページ(LP)を作るためには、たった一人の架空の顧客像を明確に設定するペルソナ分析が不可欠です。
ペルソナの置かれている状況、日常の行動、抱えているストレス、そして口には出さない本音までを深掘りすることで、初めて見込客が「自分のことを言われている」と感じる強い訴求メッセージが生まれます。
第2回となる今回は、税理士事務所のLP制作におけるペルソナ分析の重要性と、ターゲットの本当の悩みを掘り起こすための実践的なアプローチについて解説します。
なぜ属性データ(デモグラフィック)だけでは不十分なのか
一般的なターゲット設定では、年齢、性別、居住地、事業規模(社員数や売上高)といった属性情報(デモグラフィック)を決めて満足してしまいがちです。
例えば、「社員数5人〜20人の製造業の経営者」という設定だけでは、その人物が日々どんな感情で働いているのかまでをイメージすることは困難です。
同じ社員数や業種であっても、以下のように置かれている状況や心理状態は全く異なります。
- 日々の現場作業と営業に追われ、数字のチェックや資金繰りの管理まで手が回らず焦っている
- 会社の数字は把握できているが、節税対策や将来に向けた投資の判断基準に確信が持てない
- 既存の顧問税理士とのやり取りに不満があり、より提案力のある相談相手を探している
Webサイトの文章で訪問者の感情を動かすために必要なのは、単なる属性情報ではなく、どのような状況で、どんな感情を抱き、どんな言葉に反応するのかという行動・心理のプロファイルです。
ペルソナの表面的な課題と本音(インサイト)を区別する
ペルソナ分析において最も重要となるのが、ユーザー自身が認識している表面的な課題と、潜在的に抱えている本音(インサイト)を明確に区別することです。
訪問者が検索窓に入力するキーワードや問い合わせ時に口にする理由は、多くの場合、表面的な課題に過ぎません。
その奥底にある感情や本音にアプローチして初めて、競合他社との差別化や信頼感の獲得につながります。
具体的に、経営者向けの支援を想定した場合の課題と本音の構造を見てみましょう。
経営者の課題と本音の2層構造(例)
- 表面的な課題(検索するきっかけ)
- 記帳や決算業務をプロに任せたい
- 節税対策や資金繰りのアドバイスが欲しい
- 今の顧問税理士の対応に不安・疑問がある
- 潜在的な本音(インサイト)
- 現場や営業に追われて孤独を感じており、本音で相談できるパートナーが欲しい
- 主観的な判断だけでなく、客観的な数値やプロの視点で経営の方向性を指摘してほしい
- 自分の判断や会社の未来に対して、確信を持って一歩を踏み出したい
同様に、個人の税務手続きや突発的な問題で相談を検討しているユーザーの場合も見てみます。
個人の課題と本音の2層構造(例)
- 表面的な課題(検索するきっかけ)
- 手続きや申告の期限が迫っていて焦っている
- 自分で調べても書類の作成方法や基準がわからない
- 潜在的な本音(インサイト)
- 高額な報酬を後から請求されないかという金銭的な不安がある
- 家族や関係者との間で将来的なトラブルを起こさず、穏やかに解決したい
- 何から手をつければいいか分からない状態を整理し、スケジュールを見える化してほしい
LPのコンテンツを作成する際は、表面的な課題に対する解決策を提示するだけでなく、「そうそう、まさにそのことで悩んでいた」「この事務所なら自分の気持ちを分かってくれそうだ」と思わせるような本音に寄り添う一文を盛り込むことがポイントです。
ペルソナを具体化する4つの視点
ペルソナの解像度を高めるためには、以下の4つの視点からターゲット像を書き出していく方法が有効です。
1. 人物像と置かれている環境
どのような仕事や役割を担い、どのような環境で日々を過ごしているのかを整理します。
経営者であれば、社内の人間関係や業務の偏り、周囲に経営の相談ができる相手がいるかどうかといった人間関係・職場環境までイメージします。
真面目に経営に取り組んでいるものの、日々の忙しさに飲み込まれ、頭では変わらなければいけないと分かりつつも動き出せないといった現実的な背景を描き出します。
2. 抱えている具体的なお悩み
日常的にどのようなストレスや不安を感じているのかを列挙します。
- 売上や利益の伸ばし方、どの部分に注力すべきかの判断基準がない
- 通帳残高や資金繰りに漠然とした不安があり、将来の明るい展望が描けない
- 専門用語ばかりで説明されると理解できず、質問するのも気が引けてしまう
- 手続きの全体像や期限が見えず、常に背後霊のように不安がつきまとっている
3. 相談を阻む心理的ハードル
お問い合わせボタンを押す手前で、訪問者がためらう原因となる不安要素を特定します。
専門家に相談する際、ユーザーは心理的ブレーキを無意識に踏んでいます。
- 敷居が高そう
- 自分の状況で相談してもいいのだろうか
- 無理な売り込みをされないか
- 費用が明瞭でないと怖い
これらの不安をLP上でどのように解消するかをあらかじめ設計しておく必要があります。
4. 検索を始めるきっかけ(トリガー)
日常を送っていたユーザーが、今すぐネットで税理士を探さなければ、と行動を起こした瞬間のきっかけを明確にします。
- 事業の規模が大きくなり自社内での処理に限界を感じた
- 既存の税理士との面談で不信感を覚えた
- 家族や親族の環境変化によって具体的な手続きの必要性が生じた
など、行動の引き金となった出来事を特定することで、検索キーワードやLPのトップメッセージ(キャッチコピー)にダイレクトに反映させることができます。
ターゲットに刺さるペルソナ分析シートの活用
ペルソナ分析を行う際は、チームや制作担当者との認識を合わせるためにも、下表のような項目で資料に整理しておくことが推奨されます。
| 分析項目 | 整理すべき具体的な内容 |
|---|---|
| 人物像・置かれている状況 | 役割、日々の生活・業務スタイル、直面している環境や人間関係 |
| 表に出ているお悩み | 検索窓に入力する言葉、口にして伝える相談内容(表面的な課題) |
| 潜在的な本音(インサイト) | 誰にも言えない不安、言葉にできていない欲求、本当に望んでいる未来 |
| 行動を起こしたきっかけ | ネットで検索し始めた具体的な出来事やタイミング |
| 問い合わせの不安要素 | 費用、対応の雰囲気、専門用語への不安など相談をためらう理由 |
この表をしっかりと埋めることで、LPのキャッチコピー、掲載するQ&A、導入部分のストーリー展開がブレずに決まっていきます。
中小企業・事業者をターゲットに据える際の文脈づくり
税理士事務所が事業主や中小企業をターゲットとしてLPを展開する場合、なぜ中小企業に特化した支援を行うのかという文脈を自然に伝えることが重要です。
大企業と異なり、中小企業や個人事業主は社内のリソース(人材・資金・時間)が限られています。
経営者が営業、現場、管理業務まで兼任しているケースが多いため、単なる税理士としての帳簿チェックや申告処理にとどまらず、経営の全体像を一緒に見てくれる存在や数字を分かりやすく示してくれる伴走者へのニーズが極めて高くなります。
「リソースが限られている中小企業の経営者だからこそ、数字を武器にして本業に集中できる環境をつくってほしい」といった文脈をLPのメッセージにさりげなく盛り込むことで、訪問した経営者は「自分の立場や苦労を理解してくれている」と感じ、問い合わせへのハードルが一段と下がります。
まとめ
ペルソナ分析とは、単なるデータ作成ではなく、訪問者の心の中にある声を聞く作業です。
ターゲットの表面的な悩みだけでなく、置かれている環境や潜在的な本音まで深掘りすることで、LPに掲載すべき文章や画像、構成の優先順位が鮮明になります。
次回、第3回では、ペルソナ分析で導き出した悩みに対して、なぜ自事務所が選ばれるのかを証明する差別化軸の発見と独自の強みを言語化するポイントについて詳しく解説します。
次の記事 > 税理士事務所LPの作り方③ | 選ばれる理由を作る差別化軸の発見と独自の強みを言語化するポイント
連載『税理士事務所LPの作り方』の目次
- 第1回:なぜ一般的なWebサイトでは問い合わせが来ないのか?勝ち筋となる戦略設計
- 第2回:ターゲット顧客の本当の悩みを深く掘り起こす、ペルソナ分析手法
- 第3回:選ばれる理由を作る差別化軸の発見と独自の強みを言語化するポイント
- 第4回:相談の心理的ハードルを下げる構成案とコンバージョンを生むストーリー設計
- 第5回:信頼感を高めるコンテンツ表現と専門性を伝えるデザイン・表記の要点